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いつも一緒に〜ケセラセラ3

 ぐったりとしている理央の横に添い、身体を沈めた。満足感が和人を包みこむ。 心が温かくて、想いが溢れてきて。
「理央……」
 汗で額や頬に張り付いている髪をかきあげながら、愛しい人の名を呼ぶ。 ぼんやりと目を開けた理央が小さく微笑み、「オレ変じゃなかった?」と瞳を伏せた。
「君は素敵だよ。最高だ。君しか見えない。思い出すだけで…ぞくぞくするね」
「そか。よかった……。悩んでたのが馬鹿みたいだな」
「うん。だからもいっかい、する?」
「しない」
 即答され、渋々引き下がった。
(慣れるまでは我慢しよう)
 初めての経験で、しかも本来の役割とは違う器官を使うのだから無理は出来ない。それはわかる。 しかも和人とは鍛え方が違う。体力の差も感じたのだった。 それでもまだ触れていたい。理央を感じていたい。
「じゃあ、キスならいい?」
 返事を待たずに理央の頬に手を当て、くちづけを交わす。触れるだけのそれはやがて深いものに変わり。 理央の中で警笛がなっていた。身体がもたない、と。
「シャワー浴びたい。喉も渇いたなあ。でも歩けそうもないし……。和人、連れてって」
 首に手を回し、吐息が和人の耳をくすぐる。
 普段つれない態度の恋人のこういう甘えは嬉しいもので。 意図的に発した甘い声とは知らず、理央の思惑どおり、和人の唇が離れ軽々と理央の身体を抱き上げた。
「僕の大事なお嫁さんだからね。仰せの通りに」
「寝るときはちゃんと腕枕だからな。お約束だろ? 新婚の」
 お姫様だっこ状態での理央の要求は、姫というより女王様? 有無を言わせぬ口調が『新婚』という響きと似つかわしくないような気もするが、 和人本人はその突っ込みどころを聞き逃しているようで。
(痺れても、動かせないな)
「君も起きたらおはようのキス。寝るときはおやすみのキス。 出かけるときはおでかけのキス。帰ってきたら…」
「あーーっ、もう煩い!」
 足をバタバタさせ暴れる理央に、宥めのキス。効果てきめん。ピタッと大人しくなり、腕におさまった。
「早くシャワー浴びて寝ようね。もう新聞やさんの配達の時間だよ」
「眠くない……でも…」
 まだ気分が高揚している。一日で随分と成長しすぎてしまったから。
「和人がずっと抱きしめててくれたら寝れるかも…」
 暖かな部屋に穏やかな空気。和人の匂いを感じて、温かな腕に包まれれば。安眠効果バツグンかも、と思う。
「いいよ。君が安心するなら、なんでもしてあげる」
 最近、和人にわかったことがひとつ。理央は実のところ、かなりの寂しがりやなのではということ。
 一人っ子のせいか、他人に甘えることをしない。だけど、常に和人を視界にいれていることを知っている。 この腕の中ほっと安らぎの息をついていることも。 恥ずかしくて強がりの言葉が出てしまうことも。

 肌を重ねて少しは素直に自分を求めてくれればいい、でもやっぱり無いかな、と、 和人は腕の中、『早くシャワー』と騒ぐ恋人を見下ろし苦笑した。

 どちらがどちら色に染まるのか。それは誰にもわからない未来。
 理央と揃いの白いシルクのパジャマを手に引っ掛け階段を降りる。
 お互いをお互いに染めてしまえばいいんだ、和人は心の中で『ポンッ』と手を打った。

end.


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