◆吸血鬼の住む館〜7◆
美しい緑と大地の国。アプリルでは、今日も色とりどりの花が咲き乱れ、鳥たちは澄んだ声音で歌をうたっています。 この国に、つい先日、素晴らしいお祝い事がありました。 人々は浮かれ騒ぎ、そして祝福します。 王子様の結婚。 美しいパートナーが皆にお披露目されたのは、つい先日のこと。 その見目麗しい姿と、華やかな笑顔に心惹かれないものはいませんでした。 ふたりはお城に住んでいます。 そして王子様は、パートナーを得て、少し変わったようです。 自然な笑みで笑うことができるようになりました。優しい表情をするようになりました。 孤独だった王子様は、今は孤独ではありません。 愛する人が出来たのですから。 以前、ひとりきりになりたい時に、出入りしていた小さな森の館がありました。 元々老朽化の進んでいた館。加えて、ちょっとしたアクシデントもあり、とても酷い有様となってしまいました。 息抜きには使えそうも無いのですから取り壊すだけで良かったのに、 それでも改築を命じたのは、そこがパートナーと出会われた大切な場所だからです。 もうすぐ完成する屋敷は彼らの別荘として利用されることが決まっています。 あの館には吸血鬼が住んでいる。 そう噂されたのも少し前のこと。 白く可愛らしい洋館は、人々に恐れられた名残はどこにもありません。 しかし噂話というのは薄れることはあっても、絶えることはないようです。 いつの間にか、街に流れ始めたこんな噂がありました。 『あの光溢れる森には、美しい天使が舞い降りるらしい』 これは、今とは違う時代の今とは違う国の物語――。 |
2005/04/01(end)
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