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いつも一緒に3

 高等部に入学してからも中等部の時と同じように、理央は弓道を、和人はサッカーを続けている。それぞれ練習は厳しく、時間も違えば場所も違う。すれ違いが続き、交わした会話と言えば、たまに見かけた時の挨拶程度。
 そして、入学してから既に九ヶ月。正月も終わり、新学期が始まった。
 そんなある日 ──
 相模に用事のあった理央が彼の教室へ急いでいると、ちょうど曲がり角で、出会い頭に人にぶつかり派手に尻餅をついてしまった。
「痛っー」
 見上げると、そこには困ったような顔で手を伸ばす和人。
「ごめんね。大丈夫?」 差し出された手を掴み、起き上がる。
「平気だけど。霧生も平気か?」
 僕はなんともないよ、と申し訳なさそうに言う。
 今まで全くと言っていいほど顔を合わせなかった和人と理央。
 それが、これを機会に鉢合わせが何度も続き、仕舞には「お前わざとやってるだろう?」 と理央に勘ぐられる始末。 「わざとなんて出来るわけがないでしょ? 君に発信機でも付けたなら別だけど」 その言葉に思わず体中に手をやり、何も付いてないことを確認する日が繰り返される。

 やがて帰りまでも一緒になる事が多くなった。まるで待ち合わせしているかの錯覚を起させる。
 どちらかが合わせているわけでもなく、
   いつものように練習が終わり、
   いつものように帰り支度を済ませ、
   いつものように校門に向かうと、
 相手も同じ行動を取っているのだ。

── 偶然が重なり始め……

 そしてもともと単純な思考の持ち主である理央は思った。(これは運命かも!) と。

 偶然が重なるとそれは必然になり、やがて運命になると人は言う。
 好意とセクハラが紙一重なように、偶然と運命も紙一重だ。ようは気の持ち方次第。運命だと思うのなら、突き進めばいい。

(可笑しいよな。男が男に運命を感じるなんて。気持ち悪がられるだけかも知れないしなー。どうするかな)
 しばらく考えていた理央だったが、思い立ったら即行動が信条である。すぐにA組に行くと部活前の和人を呼び出し、放課後の誰もいない音楽室に連れて行った。



 教室に入るなり深呼吸を一つして、あくまで判りやすく、単刀直入に。
「オレと付き合って欲しい」

 和人は理央がなぜ呼び出したのか見当も付かなかった。話しかけられた事さえほとんどない相手。 だから、音楽室のドアを閉めたとたんの告白に、我が耳を疑ったのだ。
 もう一年以上も前から、弓道場での理央を見た日から、惹かれていたのは事実。 だが、断られるのが怖くて言い出せずにいた。言わなければ、少なくとも友達の関係は続けられると思っていたから。
 理央の言葉を反芻してみる。 (えーっと、付き合って欲しいって言ったんだよね?) あまりの嬉しさに頬が緩みそうだ。
「いいよ」
 言葉の意味を噛み締め、にっこり微笑みながら言ったのだが、 さっきの少しの間を拒否と受け取った理央は、瞳を合わせようとせず、和人の声も聞こえてはいなかった。
 自分の行動に恥ずかしさを覚える。突然顔が真っ赤になり、目の前で手をパタパタと振りはじめた。無かった事にしようとでもいうように。
「そうだよな。気持ち悪いよな。男が男に告白なんて。ごめん忘れてくれ……。でも……今まで通りじゃなくてもいいけど、出来れば無視とかしないで欲しい……」
 じゃあと出て行こうとする理央の腕を掴んだ。
「どうして? いいって言ってるのに」
「はい?」 掴まれた腕に眼をやり、和人に視線向けるとそこには優しい微笑みが浮かんでいた。 「付き合うんでしょ、僕たち。どうぞよろしく、理央くん」
「え……えぇーーーー!?」

 こうして二人は付き合うことになったのである。

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